民事再生手続きの概要(抜粋)は、以下の通りです。
経済的に窮地にある債務者について、債権者と債務者との間の民事上の権利関係を適切に調整することにより、債務者の事業または経済生活(会社)の再生を図ることを目的とする
全ての法人及び自然人を手続きの対象者とする
債務者以外の者(但し、申立人を除く)は保全処分等または開始決定がなされるまでの間、事件記録の閲覧等の請求をすることができない
債務者及び債権者は、手続き開始の申立てをすることができる。債権者申立ての場合、債務者が手続きの進行に反対したときは、申立てが棄却されることになろう。債権者による申立ては、単独でも複数名でもよい。債権額につき、会社更生法30条2項(資本の10分の1以上に当たる債権を有する債権者)のような制限はない
<保全処分>
裁判所は、会社再生手続き開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、その申立てにつき決定があるまでの間、債務者の業務及び財産に関し、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命じることができる。弁済禁止、財産処分禁止等の保全処分である
<他の手続きの中止命令>
破産手続きは、破産宣告の前後を問わず中止できる。特別の先取特権その他の一般の優先権のある債権に基づくものや企業担保権の実行手続きは中止できない。なお、別除権に基づく担保権実行としての競売の中止命令は31条による
<強制執行等の包括的禁止命令>
破産手続き、整理手続き、特別清算手続きは、包括的禁止命令では禁止も中止もされず、26条の中止対象となるだけである。訴えの提起や調停の申立て等も禁止されない
<手続き開始の申立ての取り下げの制限>
保全処分の申立ての乱用を防止するため、保全処分、他の手続きの中止命令、包括的禁止命令、担保権の実行中止命令、監督命令又は保全管理命令がされた後は、裁判所の許可を得なければ、会社再生手続き開始の申立てを取り下げることができない
<他の手続きの中止等>
再生手続きの開始の決定があった場合には、
①破産、会社再生手続き開始、整理開始及び特別清算開始の申立て
②債務者の財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分及び会社再生債権を被担保債権とする民事留置権の実行としての競売の申立て
はすることはができず、既にされている破産手続き及び②の強制執行等の手続きは中止し、整理手続き及び特別清算手続きは失効する
再生手続き開始の決定後、債務者が営業又は事業の全部又は重要な一部の譲渡をするときは、裁判所の許可を得なければならず、裁判所は、許可をするには、知られたる会社再生債権者の意見を聴くか、債権者委員会の意見を聴かなければならないし、労働組合等の意見を聴かなければならない
債権者は、債務者に債務を負担する場合、債権及び債務の双方が会社再生債権届け期間の満了前に相殺に適するようになったときは、その期間内に限り、相殺することができる
債権調査の結果は、会社再生債権者表に記載され、その記載は、会社再生債権者の全員に対して、確定判決と同一の効力を有する
異議のある無名氏の会社再生債権については、その会社再生債権者は、債権調査期間の末日から1月内に、債権者及び異議者全員を相手方として会社再生裁判所に債権内容の査定の申立てをすることができ、裁判所は、決定で異議ある無名義債権の内容を定め、裁判所の決定に不服がある者は、1月内に、相手方を被告として会社再生裁判所に異議の訴えを提起することができる
財産状況報告のための債権者集会と会社再生計画案決議のための債権者集会とを設けるが、その開催を任意的なものとし、債権者集会を開催しない場合には、前者については財産状況報告書を利害関係人の閲覧に供し、又は後者については会社再生計画案に対する書面による決議を行う
簡易再生や同意再生を申し立てる場合、債務者等は労働組合等にその旨を通知しなければならない
租税債権や労働債権等の一般の先取特権その他の一般の優先権のある債権は会社再生債権とはならず、会社再生手続きによらないで随時弁済する
債権者等が作成した財産目録及び貸借対照表並びに債務者、管財人、調査委員及び監督委員が裁判所に報告した書類は、利害関係人の閲覧に供される
裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てによりまたは職権で法人である債務者の理事、取締役、監事、監査役、精算人及びにこれらに準ずる者の責任に基づく損害賠償の査定の裁判をすることができ、また役員の財産に対する保全処分をすることができる。債権者は管財人がいる場合、損害賠償査定の申立てをすることができない
債権者等は、会社再生手続き開始決定後、裁判所の許可(担保権の目的財産が債務者の事業に欠くことのできないものであるときに限ってされる)を得て、別除権の目的である財産の価額に相当する金銭を、裁判所に納付して、債務者の財産の上に存する担保権を消滅させることができる。
担保権の目的は、債務者所有を前提としており、物上保証の場合を含んでいない。
租税債権の差し押さえがあるとき、あるいは貸借権の(仮)登記があるときは、債務者が別交渉し解決する必要がある
債務者等は手続き開始の申立て後、債権届出期間満了前に、会社再生計画案を提出することができる
再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、その債務の期限は、特別の事情がある場合を除き、10年以内でなければならない
再生計画は、債権者集会の決議又は書面による決議の結果可決され、かつ、裁判所が認可することにより、成立する
再生計画案を可決するには、議決権を行使することができる届出再生債権者で出席したものの過半数で、かつ、議決権を行使することができる届出再生債権者の議決権の総額に2分の1以上の同意があることが必要である
再生計画の定め又はこの法律の定めによって認められた権利を除き、債務者は、原則として全ての会社再生債権について免責され、会社再生債権者の権利は、会社再生計画の定めに従い、変更される。
会社再生計画によって認められた債権についての会社再生債権者表の記載は、執行力を有する
届出再生債権者の総債権額の5分の3以上に当たる債権を有する届出再生債権者が、書面により、債務者等の提出した会社再生計画案に同意するとともに、債権調査及び確定の手続きを省略することに同意している場合には、裁判所は会社再生債権の届出期間の経過後、会社再生債権の一般調査期間の開始前に限り、債務者等の申立てにより、簡易再生の決定(会社再生債権の調査及び確定の手続きを経ない旨の決定)をすることができ、その決定があると、債権調査手続きを経ずに、直ちに、会社再生計画案の議決のための債権者会議を開催し、簡易かつ迅速な会社再生計画成立が可能となる。 この場合には、債権内容の確定を経ないこととなるので、債権者表には、執行力が付与されない。
簡易再生については、書面による決議はできず、会社再生計画認可決定が確定しても、未届出債権の失権効はなく、会社再生計画の変更はできない
届出をした債権者の全員が、債務者等の提出した会社再生計画案に同意するとともに、債権調査手続きを省略することに同意している場合には、裁判所は、債権調査及び確定の手続きと会社再生計画案の議決を経ない旨の同意再生の決定をすることができ、直ちに、会社再生計画が成立する。
執行力の有無、会社再生計画案の条項、書面決議の可否、会社再生計画の認可決定確定の効力、会社再生計画変更計画の可否については、簡易再生と同様である
再生計画認可の決定の確定により、会社再生手続きは、原則として終了するが、監督委員がいる場合には会社再生計画が遂行されたとき又は会社再生計画認可の決定が確定した後3年が経過するまで、管財人がいる場合には会社再生計画が遂行されたとき又は会社再生計画が遂行されることが確実であると認めるに至るまで、会社再生手続きは終了しない
債務者等が会社再生計画の履行を怠った場合には、裁判所は、会社再生債権者で、会社再生計画によって認められた権利について履行期限に履行を受けていないものであって、かつ履行されていない債権の10分の1以上に当たる債権を有する者の申立てにより、会社再生計画を取り消すことができ、この場合には、確定した会社再生債権の全額につき会社再生債権者表の記載は、執行力を有する
参考文献:入門 民事再生法(東京弁護士会編 ぎょうせい)